酒井邦嘉さんコメント

『チョムスキーと言語脳科学』の著者、酒井邦嘉です。
チョムスキーには何度かお会いしたことがあるのですが、私から見ても学者の中の学者というか、非常に物静かで、自分の考えを積み上げて、余分なことは言わないで、非常に理路整然と論を組み立てる名人という感じの方です。
私はそのチョムスキーの理論を脳科学で実証しようという研究をずっと続けてきています。
人間の脳は全体で動いている訳はなくて、左脳と右脳に大きく分けたとして、言語の場合にはほぼ左脳を使っています。その中でも人間で特に発達しているのが前頭葉ですが、前頭葉のある部分(下前頭回)に「文法中枢」という文法の処理に特化した領域があり人間の最も重要な機能を司っているのだということを突き止めました。
人間の言語というのが自然科学としての裏付けがあるということを分かっていただけたら嬉しいです。

書影
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インターナショナル新書 037

『チョムスキーと言語脳科学』

酒井邦嘉

作品紹介

脳科学が人類最大の謎、言語に挑むーー!

子どもが楽々と言葉を身につけられるのはなぜか?
第二言語の習得が難しいのはどうしてか?
人工知能が言語をうまく扱えない本当の理由――。
チョムスキーの理論を言語脳科学で実証し、数々の謎が明らかに!

すべての自然言語には共通の基盤があり、言語機能は生得的だとする「生成文法理論」は正しいのか。
言語研究の「革命」を告げるチョムスキー著『統辞構造論』を詳しく解説し、生成文法理論の核心となる<文法中枢>が脳内に存在することを、言語脳科学の実証実験によって明らかにする!

担当編集者より

「言語は、コミュニケーションのために生まれたものではありません」
本書の当初の企画は、酒井邦嘉先生に「言葉と脳について100の質問に答えていただく」というものでした。「認知と言語」「<歌う>と<話す>」「多言語話者の脳」「動物の<言葉>」など、硬軟さまざまな質問の中で、ふと出てきたのが「言葉はコミュニケーションのために進化してきたわけですよね?」という問いかけでした。私としてはしごく当たり前のこととしてうかがったつもりだったのですが、その問いに対して酒井先生から返ってきたのが冒頭の言葉でした。
「言語はコミュニケーションのために生まれ、進化したものではない」――編集者として言葉を生業としてきた私にとって、それはとても衝撃的な答えでした。
では、言葉はいかにして生まれ使われるようになったのか、そもそも言葉とは何なのか、「言葉」の本当の姿を知りたい、この本はそうした素朴な問いから生まれました。
言葉に興味のある人に、ぜひ読んでいただければと思います。

定価 本体860円+税
発売日 2019年04月05日
ジャンル 科学
書名(カナ) チョムスキートゲンゴノウカガク
新書判 256ページ
ISBN 978-4-7976-8037-9
Cコード C0240

著者

写真写真

酒井邦嘉(さかい くによし)

言語脳科学者、東京大学大学院教授。1964年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。1996年マサチューセッツ工科大学客員研究員を経て、2012年より現職。第56回毎日出版文化賞、第19回塚原仲晃記念賞受賞。脳機能イメージングなどの先端的手法を駆使し、人間にしかない言語や創造的な能力の解明に取り組んでいる。著書に『言語の脳科学』『科学者という仕事』(ともに中公新書)、『脳の言語地図』(明治書院)、『芸術を創る脳』(東京大学出版会)など。

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