廣瀬匠さんコメント
私は元々星を見るのが好きで、その楽しさを多くの方と分かち合いたくて天文の道に進みました。今は大学で天文学の歴史を研究し、また天文の面白さを分かりやすく解説する星空案内人、通称「星のソムリエ」という資格ももっています。
「天文学」は、難しくて日常とはかけ離れた学問という印象はないでしょうか。
しかし歴史を遡ると、天文が社会や文化、人々の日常生活に関わっていたかが分かります。たとえば暦の周期は太陽、月、惑星などの動きと密接に関わっています。
また、星座の星々は季節や方角を知る上で重要でした。天文学は人類最古の学問だと言われることさえあるほどです。
天文の歴史に焦点を当て、天文を身近なものに感じていただくために執筆したのが『天文の世界史』です。
本書には、古い時代だけでなく、現代の天文学における最先端のトピックもなるべく盛り込みました。
また古代ギリシアや西洋だけでなく、日本・朝鮮・中国などの東洋、インド、イスラム文化圏、さらにはアメリカ大陸、アフリカ、オセアニアにおける天文と人々のつながりについてもふんだんに言及しています。
本書のもうひとつの特徴は章立てです。時系列や地域でなく、太陽と月、次に惑星、それから星座の星々と、天体の種類ごとに章立てしています。時代や場所を超えて変わらない見方をされる天体もあれば、全く異なる見方をされる天体もあることがわかります。
是非とも本書をお手にとって、私たちとは異なる時空に暮らしていた人々の宇宙との関わり方について思いを馳せてみてください。そして願わくは、皆さまご自身が空を見上げるきっかけに本書がなればと思います。